Mon, 5 May 2003
こだま通信6号
○ 風薫る5月になりました。皆様にはいかがお過ごしでしょうか。イラク戦争が終結したと思っ たらSARSなど新型肺炎の流行などが報じられ、世界の情勢は緊張が続いているようです。国 内では白装束の集団が車で移動して物議を醸していますが、多摩川のタマちゃんが埼玉県の朝霞 市内の荒川岸に現れたとのこと、こちらは皆さんがあたたかく迎えているようです。
○さて、私は最近、埼玉県日高市より富士見市に住所を移しました。附近は富士見市役所、図書 館、公会堂など市の施設が立ち並び、道路は川越-富士見有料道路に隣接しております。家は築 27年の古家で小さいながら庭があり、浄土真宗の寺、墓地、農家の屋敷林などに接しておりま す。最近、この屋敷林で竹の子掘りを体験しました。シャベルを根にあてぎゅっと差込ますとポ ろっと抜けるのです。竹にちなんでこだま通信も韓国シリーズがまだ続きます。
○第6号では韓国 人の本音にせまる、というテーマで韓国のジャーナリズムに目を向けたいと思います。 呉善花著「韓国併合への道」 文春新書のシリーズで出版されたこの小著は、H12年初版でh14年12月で第7版を重ねてい る。この勢いを見ても本書が注目の書であることが覗えます。著者は1956年韓国済洲島生まれで、 1983年来日、大東文化大学の留学生となり、その後東京外国語大学修士課程終了。現在日韓 文化協会理事。
○ 戦前、韓国は日本の植民地であった。本書ではこの日韓併合への過程が詳しく紹介されている が、従来の韓国が主張してきた「日本帝国主義による民族的抑圧」に疑問を呈し、韓国国内に日 韓併合を積極的に受け入れる歴史的背景があった、とする視点である。本書の終章には「韓国人 の内部に近代民族国家の建設というテーマが生まれるには、日韓併合論は避けて通ることのでき ないプロセスであった」という記述がある。この視点は突き詰めれば「日本のアジア侵略」は 「日本のアジア解放」であったという主張と軌を一にするもので、これまで久しく紹介されてき た日本敵視論とは対立する見方です。
○一般的に韓国の人々は自己主張が強いと言われます。しゃべり方一つを見ても喧嘩をしている ような話し方です。儒教思想により礼節を重んじる国民であるとも言われていますが、キリスト 教会も多く信心深い国民であるとも言われています。しかしIMF体制以降、大宇財閥の崩壊に 見られるような韓国経済の危機は、韓国民の統一意識を分裂させつつあるように思われます。こ れまでの韓国の世論は「日帝」の悪行追求だけでしたが、「日本帝国主義による民族的抑圧」に 疑問を呈し、韓国国内にそれを受け入れる歴史的背景があったとする主張が生まれてきているの です。 この本を読んでみて、韓国の人々、特に学会の中にある排他的思想への疑問がなんとなく解け ました。学会内のグループ対立はどこの国にもあるとしても同業者同士が決して他者の理解を得 ようとせず、予算の獲得も特定の政治勢力と結びついて行われる韓国の実情はあまり知られてい ません。
○朝鮮の李王朝時代、諸外国からの圧力に対する意見の相違から、両班(ヤンパン)と呼 ばれた高級官僚たちの抗争が朝鮮王朝を衰退に追い込んだという記述が本書の中にあります。朝 鮮王朝の科挙制度のもとで、教育重視=知育重視の民族意識は儒学各派の偏狭的な教育を助長し、 それが今日も引き続き受け継がれているように思われます。 今日、アジア諸国の中には「大東亜共栄圏構想を受容する歴史的背景」に関するジャーナリズ ムの台頭が指摘されています。その理由としてはアジア諸国の若者が日本に留学し、日本とアジ ア諸国の関係に関する研究が盛んになってきている事情が考えられます。韓国から日本への留学 生の数は米国への留学生の数に比べればずっと少ないのですが、その理由はひとえに米国と日本 の研究環境の違いにあると言われています。次回のこだま通信では、その話題も含めて辛淑玉著 「愛と憎しみの韓国語」について感想を述べたい思います。