赤と黒



書名 赤と黒(AKA TO KURO)
著者 スタンダール(STANDARL)
発行所 集英社 (SYUEISYA)
定価 ****円(税別)
ページ数 *
ISBN
購入日 1999年03月01日

購入の動機
西武飯能駅の「かえる文庫」より借用。
よみごろ感があったので。名前は覚えていたが内容はすっかり忘れていたので。

読後感
 上巻は今風の表現でいえば不倫小説である。18世紀のフランスの田舎町で一人の天才少年が、
抜擢され上流家庭に家庭教師として迎えられるところからストーリーは始まる。少年は教会の
司教から徹底的に聖書を教え込まれてきたがその記憶力はすばらしく、周りの賞賛を浴びるほど
の天才少年であった。
家庭教師に入った家庭には、町長職の夫と、婦人、3人の子どもたちがいた。主人公の少年はやがて
若い婦人と恋に落ち、やがてその行為は大胆になり周りの使用人のうわさとなってついには追放
されてしまう。主人公はしかし落胆することなく自分の才能に自信を深め、次の新しい生活の場で
ある神学校でも才覚をあらわし、ついにパリ行きの機会をつかむ。
 この本の面白いところはフランスの田舎町の様子がいきいきと描かれている点である。また少年
と婦人の心の葛藤が細かく描写され、どのように二人が転落していく様をリアルに描いている点で
ある。 以前はわからなかったが、当時の貴族階級と新興ブルジョワ階級の桎梏から二人をとりま
く環境は大きく揺らいでいく。一方は下克上的な野心家である主人公の少年。それは当時の農民
階級の開放感であり、もういっぽうの貴族階級は自由主義者との対決、すなわち力関係のバランス
が崩れ去る時代でいかに生き残りをかけていくかが描かれている。そしてそのことをとおしてナポ
レオンの台頭が当時のフランス社会に与えた影響が暗に描かれている。