武蔵高萩駅の桜 吉沢光平さん(高萩)

日高の魅力再発見 (広報ひだかNo.470(2006年3月1日号)掲載)

JR川越線武蔵高萩駅の南口は、さくら口と名付けられています。駅前広場と県道川越日高線を結ぶ坂道には、およそ30本の桜が植えられていて、春には花のトンネルをつくります。わたしにとって、この桜は戦争の記憶と重なります。昭和15年、日支事変で中国の塘沽(タンクー)へ出兵するとき、戦地への第1歩を踏み出したのが、開業してまだ間もない武蔵高萩駅だったからです。そのときに見たこの桜は、高さ1メートルにも満たない小さな苗木で、しっかりと根付くには歳月がかかりそうでした。

記憶が定かではありませんが、桜が植樹されたのは駅舎の建設が進む14年ころだったと思います。駅舎の開業(15年7月22日)に間に合うように、駅前道路の舗装をしたとき、高萩村青年団が桜を植えたのでした。(その後、戦争から復員してきた兵隊が記念に植えたものもあるかもしれません)時代が時代でしたので、桜の開花を見届ける余裕はありませんでしたが、兵隊を見送ったり、まちの移り変わりを見てきたこの桜にはこれからもずっと長生きをしてもらいたいと思っています。